森友側と値引き交渉をしていた当時、理財局長だった迫田英典氏、売却契約時の局長だった佐川氏の耳にも当然、入っていたはずだという。

「迫田、佐川両氏は大阪地検の事情聴取に対し、『知らなかった』と答えているが、理財局職員らは局長らの指示がなければ、値引きや改ざんなどできないと話し、言い分が食い違っている」(前出の地検関係者)

 不可解なのは、もう一人の人物だ。15年4月30日に電子決裁された資料には、この時点では退職していたはずの理財局国有財産業務課の石尾哲郎・国有財産情報分析官の名前が出てくるのだ。石尾氏の名前の横には【同報】と印がついているが、これは決裁に目を通すよう依頼されたことを意味する。しかし、内閣人事局の資料によると、石尾氏は同3月31日に同省を退職し、同5月11日に外郭団体に天下っていたのだ。

 電子決裁システムを管理する総務省を取材すると怪訝そうにこう答えた。

「退職された方のメールアドレスは通常、翌日にはなくなる。1カ月前に辞めた人物に決裁資料を送ることは事実上、不可能です」

 石尾氏を直撃すると、同3月31日に財務省を退職したことを認めた上で、同4月28日に起案された決裁資料を見たか、と問い詰めると、「覚えがない」と答えた。退職後、決裁文書に名前が載っている理由について尋ねても「よくわからない」と困惑していた。

 しかし、財務省を取材すると、こう言い張った。

「こちらの人事記録では石尾氏は退職後、再任用され、4月30日まで働いたとなっている」

 この決裁文書には【行政文書保存期間10年 保存満了時期は平成38年3月31日】とも記されている。

「電子決裁された公文書なので、2年後に再び、上書きして改ざんすることはシステム上、難しい。18人の決裁者も人事異動している。改ざん作業は法スレスレのデタラメぶりだったのではないか」(前出の地検関係者)

 自民党幹部によれば、「今、解散すれば」との条件で、党員らを対象に調査したところ、「自民党が80議席減」という結果だったという。

 疑惑まみれで幕引きは許されないのではないか。(今西憲之/本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日 2018年6月1日号