同調査では食事のスピードのほか、「週に3回以上、寝る前2時間以内に夕食を食べている」「夕食の後にスナック菓子などの夜食を食べている」という二つの項目に当てはまっていた人が、それらをやめるとそれぞれ0.90倍と0.85倍、肥満になるリスクが低くなっていたのだ。

 ではなぜ、こうした食べ方が減量につながるのか。「肥満症診療ガイドライン2016」のガイドライン作成委員会の委員長で、公益財団法人結核予防会理事の宮崎滋さんは、こう解説する。

「理屈では、同じ食事で、同じように運動をしなければ、同じように太ります。ただ、今日の研究で、“脂肪になりにくい食べ方、食べる時間がある”ということがわかってきたのです」

 まず、早食いの人はなぜゆっくり食べる人より太るのか。宮崎さんが挙げるのは「摂食中枢」と「インスリン」という、二つのキーワードだ。

 摂食中枢は脳の視床下部にある神経で、血液中の糖の量や咀嚼(そしゃく)回数などの情報を受け取る。糖の血中濃度が上がったり、咀嚼によって多くの刺激を受けたりすると、中枢が抑制されて満腹感を感じる。

「ところが、食べるスピードが速いと摂食中枢が抑制されないうちに、必要以上の量をとってしまう。結果的に太る食べ方につながるというわけです」(宮崎さん)

 もう一つ、インスリンの問題はどうだろうか。

「一度に多くの量を食べると、血糖値が急激に上がり、糖を細胞内に運ぶインスリンというホルモンがたくさん分泌されます。インスリンは糖を脂肪に変える働きがあるため、インスリンが急激に増えればそれだけ脂肪が蓄えられてしまうのです」(同)

 逆に言うと、摂食中枢を抑制し、インスリンの出方を緩やかにするのが「やせる食べ方」。それが「ゆっくり食べる」ということなのだ。

 一方、「夜遅くに食事をすると太る」というメカニズムもわかってきている。それが、「時間栄養学」という理論だ。これは、どの時間に食べれば太る、やせるということを示したもので、そこには「BMAL1(ビーマルワン)」が大きく関係している。

「BMAL1は時計遺伝子が作るタンパク質で、体に脂肪を付ける働きをします」(同)

 このBMAL1は午後2時ごろに最も減り、午前2時ごろに最も増える。夕食が遅くなったり、夕食後に何か食べたりするほど、脂肪を蓄積しやすくなる。

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