お読みになってわかるように、ごく一般的な家庭だ。だが、40歳前後を境に家計は赤字に転じ、47歳で金融資産残高がマイナスになって「破産」。60歳の退職金でいったん黒字に浮上するものの、67歳で再びマイナスとなり2度目の「破産」をする結果になっている。

 藤川さんが言う。

「住宅ローンを筆頭に、結局は『固定費』が問題なのです。この家庭もそうですが、年収が500万円を超えたあたりから、いい生活スタイルを作ろうとする人が多くなる。いい家やいいクルマを買って、子供にはいい教育を受けさせて……と、どんどん固定費を上げていく。すると、最低限、稼がなければならない年収も上がります。マズいと思い始めても、生活レベルを上げるのは簡単ですが、下げるのはとても大変。家族がいるとなおさらです」

 その結果が「破産」の危機となるわけだ。藤川さんは、「固定費を増やさない」という意識を常に持ち、固定費が上がることに恐怖心を抱いてほしいと強調する。

 その点で、今、気になっているのが若い世代の住宅購入だ。

「買うのが早く、しかも『いい家』に住みたがる人が多いんです。まずは家から、という感じで20代で購入する人がいます。私などは若いころは家族4人で1DKでしたが、今の人はいきなり2LDK、3DKです。生活レベルと同じで、最初に広いところに住んでしまうと、それより狭いところへはいけなくなる。『体力』以上の物件を買っている人が大勢います」(藤川さん)

 大和総研金融調査部の是枝俊悟研究員は32歳。住宅購入を検討している同世代の知人夫婦を見ていると見事に「二極化」しているという。

「大企業勤めの人に限った話になりますが、共稼ぎでいくと決めた人は7千万~8千万円の物件をみています。会社に近いほうがいいと、都心のタワーマンションも視野に入れています。専業主婦がいる世帯は、そんな高額物件は手が届きません。4千万~5千万円で、場所も都内ではなく千葉や埼玉で探すケースが多い」

 藤川さんによると、共働き夫婦がそれぞれの収入を合計して、借りられる目いっぱいの住宅ローンを組んでしまうと、危うくなる場合がある。子供が生まれて2人がフルで働けなくなったり、会社の業績悪化でどちらかの給料が大きく下がったりするなど、何が起こるかわからないからだ。

次のページ