「やはり神棚を吊って神様には高いところにおいで頂くべきでは?」と家内と相談。かといって私には大工道具も資材も、棚を吊る技術もなし。

 知人に相談すると「お安い御用だ!」と、手際よく玄関に吊ってくれました。仕事に見とれている最中、「ちょっと位置が高すぎる?」と思ったのですが、厚意でやってもらっている手前口を出せず……。結果、下界からは神棚の底しか見えない『天空の城』が完成しました。

 神棚吊ってわかったのは、御宮にお供えする塩・酒・水・米・榊をこまめに取り換える手間はかなり大変だということ。また1階に御宮を据える場合、その上の天井に『雲』と書いた紙を貼らねばならないそうです。『出掛けに柏手』も、せわしなく家を出る時には正直めんど……あ、いや、ま、ホントすいません。

神棚の管理をする家内は「自分で世話できないなら買ってこないで!」と神様を犬みたいに言ってます。おいおい。罰があたりゃしないか……と心配しながら原稿を書いていたら、完成したデータを全消去してしまいました。これは書き直しです。

 今日はこれから家に帰って天井に『雲』を貼りたいと思います。どうか神様、愚かな私をお許しください。特別なご利益は要りませんので、データだけはちゃんと保存できますように。

AERA 2018年1月15日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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