Tさんが、奇妙な言葉を継いだ。
「私、結婚して四人も子供を産んだの」
(えっ、そんなに小さいのに?)
思わず心の中でそう呟いて、大センセイ、自らのいじめの正体を悟った。中学時代、彼女の背が低いことをよくからかっていたのだ。こちらは軽いからかいのつもりだったが、彼女にとってそれは、執拗ないじめだったに違いない……。
閉会の挨拶が終わり、すっかりションボリしながら会場を離れようとすると、やはりちょいワルで、モテ男だったもうひとりのヤマダ君が通路の前を歩いていた。取り巻いている女性たちの声が響いてきた。
「そう言えばさぁ、ヤマダってもうひとりいたよね」
「ああ、あのガリ勉ね」
人はなぜ、同窓会に行くのだろうか。
※週刊朝日 2018年1月5-12日合併号