愛が闘病生活に入ると、こうした“生前ペットロス”に陥る人も少なくない。うつやひきこもりにつながることもあるようだ。

 少子化や核家族化で、ペットが大切な家族という人は多い。悲しみの深さは、時代も関係しているのだろうか。開業から54年、ペットの治療に携わる赤坂動物病院の柴内裕子・総院長は「近年、人と猫との距離が近づいて、別れがより切実になっている」と話す。

「猫は本来、犬以上に独立心があり単独行動を好みます。昔は自然の中でひっそりと亡くなりましたが、(自然が少ない)現代では自由に外に出られません。大事にみとられることは猫にとって幸せになりますが、猫に対する飼い主の気持ちも深くなり、苦しむケースが多くなっています」

 完全な室内飼いだと、感情移入がより深まる。重度のペットロスに陥るときは、夫の死去や子どもの独立など人間関係の変化も重なるケースが多いようだ。

「猫との別れを、人生に起きた不幸と思わないことが大切。3年でも5年でも、自分に連れ添ってくれたことへの感謝が生まれると、気持ちも楽になります」

 例えば、猫が難病になったら、がんばったねとたたえる心で見送ってほしいという。

「悲しみの度合いや感受性は人それぞれですが、お別れを体験した人と話すと、学びや励ましもあるでしょう」と柴内さんは話す。

 死を周囲の人に話すことで救われることもある。

 ペット用仏壇・仏具専門店「ディアペット」は10月、喪中はがき(全7種、10枚セットから)を売り始めた。愛猫の写真を入れ、生前の感謝やお別れを報告できる。

「ペットを失った方は『新年おめでとう』の気持ちにはなれないでしょう。その意思表示ができ、『猫ちゃん元気?』と聞かれて胸を痛めることも減ると思います」(関口真季子取締役)

 ペットの死を伝えるという、昔ははばかられた思いを今や堂々と言える時代になったのだろう。2カ月で2千枚と想定の10倍売れた。

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