利用者からは、「こうして儀式的なことをする中で少しずつ癒やされ、(死を)受け入れられる」「喪中はがきを出すことで、一歩前に進める」など好評という。

 と一緒に入れるお墓を探す人も増えてきた。

 神奈川県在住の女性(64)は7年前、夫を突然亡くした。そのときに、猫と人のお骨を一緒に納められる墓地を都内で購入した。

「主人は無類の猫好きで、家や会社で猫を飼い、『自分が死んだら猫と埋めてね』が口癖。ネットでお墓を探して実現させました」

 お墓を訪ねると、墓石横に大きな猫形の墓誌が並び、「マリ」「キンタ」と刻まれていた。お骨の場所は地下で仕切られているそうだ。

「キンタは20年前亡くなった日本猫で、マリは7年前、主人のあとを追うように亡くなったロシアンブルーです。家には、主人が亡くなる1年前に迎えたソマリの『チイ』がいます。子どもが自立し、今はチイと“ふたり”暮らし。いずれ見送るのはつらいですが、お墓でも一緒だと思うと不思議と落ち着きます」

 猫の墓誌を含めた区画永代使用料は550万円。それを見て「うちでも」と考える愛猫家がいるという。

 つらい別れを乗り越えるために必要なのは、時間なのか、心のあり方なのか。

 実は筆者の自宅にも二つの遺骨がある。14年前と3年前に見送った愛猫だ。ともに長い闘病の末、自分の腕の中でみとったが、最初に迎えた「クロ」の死後、ずいぶんと落ち込んだ。同じ色の猫を見かけるたび、涙が止まらなかった。体重が5キロ落ち、仕事も休んだ。

 そんな自分を救ったのは、獣医師の一言だった。

「あなたは地球上の命を預かっていたんですよ。よくお世話をしましたね」

 そう言われたとき、「私の猫」が大きなものに包まれる感覚になった。愛らしい鳴き声や柔らかな毛並み、甘えるしぐさ……。次々とよい思い出がよみがえり、新たに迎える猫を愛する力に変わっていった気がした。(藤村かおり)

週刊朝日 2017年12月29日号