猫と一緒に入れる墓、喪中はがき…“生前ペットロス”の乗り越え方
猫と一緒に入れる墓、喪中はがき…“生前ペットロス”の乗り越え方

 室内飼いが増え、長生きするようになった。深く愛される一方で、別れは飼い主にとって耐え難いものになっている。体験者の話に耳を傾け、「そのとき」の心のありようを考えた。

「体重は減り、目の輝きが消え、細胞の一つひとつが“シャットダウン”するさまを目の当たりにしました」

 神奈川県に住む谷弘行さん(66)は先月、愛猫ベルを亡くした。享年20歳4カ月。人間に換算すると100歳超の大往生だった。

「私たち家族にとって初めてのペットで、ずっと健康でした。昨夏、階段から落ちて腰の骨を折り、獣医さんから寝たきりになると言われました。排泄介助が必要と診断され、オムツをつけながらがんばって、再び歩けるまでになったんです」

 たくましい命の灯が消えた日、妻、娘、娘婿、息子と家族全員が仕事を早く切り上げ、ペット斎場に集まって火葬に立ち会った。斎場の係員によると、年の割に歯や骨がしっかりして、崩れていなかったという。「悔いはないのですが、しばらく、ベルの“不在”に混乱しました……」

 熊谷さんは取り込んだ白い洗濯物を見て「ベルだ!」と錯覚したり、無意識にトイレの中を捜したりした。妻淳子さんも「生きがいを失った」と、ぼんやりすることが増えたという。

 ペットフード協会によると、室内飼いの猫の平均寿命は2016年に15.81歳。ともに長く暮らすだけに悲しみも深くなる。

 東京都内に住むヘルパーの女性(52)は一昨年、アメリカンショートヘアの「ラッキー」を肺がんで失った。享年11歳だった。「キャットタワーの上で急にせきを始め、病院で調べたら末期。無症状でわからなかったのです」と振り返る。

 手術できない状態だったので、在宅介護のために「酸素室」を借りて居間に置き、添い寝した。「あっと言う間の別れで、何もしてあげられなかった」と話す。

 家族も猫好きで複数飼いをしているが、ラッキーを見送って間もなく、15歳の雌猫のミャーが腸の病気に。「今年手術したのですが完治は難しくて。夫は溺愛しており、(前の“子”の分まで)猫を世話しながら目を潤ませています」

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