力士は全員、相撲協会に所属している。テレビ局が気を使う大手芸能プロなどに所属しているわけでもない。そして民放ではNHKと違い、相撲を放送しているわけでもない。仮に大きく揉めてしまったとしてもプラス・マイナスで考えても大きな代償はないと考えているのではないか?

 もし、同じ事件を、プロ野球選手が起こしていたらどうだったろうか? しかも、それが超有名球団だったら?

 以前、有名球団の賭博事件が雑誌でスクープされたときに、テレビでの扱いは意外とあっさりだったという印象を受けた。それほどまでに大きく扱うことではなかったのかもしれない。

 相撲はテレビ局のスポンサーになっているような大手企業が部屋を経営しているわけでもない。そんなことを踏まえると、相撲は、テレビ局にとっては忖度する必要もなく、選択肢に残る。出演している司会者、コメンテーターもさすがに言うことねえなという顔をしているときもあるが。

 相撲の問題がいつ落ち着いてくるのかわからないが、そのうち、相撲以外で忖度する必要のないものが選択肢に入ってしまったときに、それもまたメディアゾンビに食い尽くされるのだろう。と書いてきたが、僕もテレビを作る身。メディアゾンビの一員です。

週刊朝日 2017年12月29日号

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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