放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「忖度」について。
【日馬富士の暴力事件で頭を下げた日本相撲協会の八角理事長ら】
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今年の流行語大賞に選ばれた「忖度」という言葉、居酒屋にいると、近くのサラリーマンも必ず言っている。絶妙なポジションにある言葉。なぜに今まであまり使われなかったのか。
今のテレビは「忖度」だらけなんていう声も多く聞くが、僕は「忖度」の上での「選択」が大きいと思う。
近年、テレビ番組ではワイドショー的番組がとても増えた印象を受けるが、情報番組やワイドショーで取り上げられるネタは、局によって「選択」されている。いろいろな事情と、それこそ「忖度」により「選択」されているのだが、その「選択肢」の中に入ってしまうと、とことんターゲットにされるのが今だ。
例えば、不倫した芸能人で、ワイドショーで大きく取り上げられる人と取り上げられない人がいる。様々な「忖度」のあとに、「選択」され、扱っていいのだと選択肢に選ばれた場合には、その有名人の不倫ネタは徹底的に絞られていく。雑誌ではスクープされているのに、テレビでは触れられなかった場合、視聴者はその不自然さに気づいてそれをネットに書き込んでいる。今年は特にそんなネット記事も多く見られた。
で、相撲の問題、どうだろうか? 日馬富士の暴行事件により、11月ごろから毎日長時間取り上げられた。僕も、初めて出演することになった「バイキング」がたまたま日馬富士の暴行問題を取り扱う日になってしまったのだが。
暴行事件は許されないことだ。が、暴行事件から始まり、白鵬関、貴乃花親方、他の方にまで大きく広がっていった。
おそらく扱うと視聴率も上がるのだろうが、ここまで連日テレビが扱った理由は、相撲に対してテレビ局が「忖度」する必要がないから、扱う「選択肢」に毎日選ばれてしまったのもあると思う。