国土交通省が16年に初めて公開した「対歩行者自動ブレーキ」の性能評価は開発陣に衝撃を与えた。トヨタ4車種、スバル4車種、ホンダ、マツダ、スズキ各1車種の、計5社11車種を対象に実施された評価テストで、ホンダ車が最下位だったのだ。

 こうした実情を受け、ホンダは開発方針を大転換した。すべて自前主義の体制を改め、グーグルとともに自動運転用ソフトウェアの共同開発などを始めた。

 研究開発体制も刷新し、東京・赤坂に「ホンダイノベーションラボTokyo」を開設。大学や他企業など外部と連携しながら、AIなどを研究開発する部署を新設した。こうした戦略を仕切るのが、東京・京橋の高級ビルの一角に17年4月から集結したエンジニア集団「開発戦略室」。ホンダの開発手法を変革する責務を担う「心臓部」となる組織だ。

「改革の方向性は間違っていないが、時間との勝負。早く成果を出していかないと、うちが今後もグローバル競争に生き残れる保証はない」。ホンダ社内からはこんな声も出ている。

 世界最強という日本の自動車産業の神話は崩れつつある。その現実を認めない限り、日本は次世代の自動車産業で後進国になりかねない。

週刊朝日  2017年12月15日号