三遊亭円丈(さんゆうてい・えんじょう)(右)/1944 年、愛知県生まれ。明治大学文学部中退。高校時代から落語家を目指し、64年、六代目三遊亭円生に弟子入りし「ぬう生」となる。69年、二ツ目昇進。78年、真打ちに昇進、「円丈」を襲名。「グリコ少年」「パパラギ」など一貫して新作落語を作りつづけ、後進から「新作落語の神様」と呼ばれる。参道狛犬研究の第一人者でもある。著書に『円丈落語全集』全5巻予定(円丈全集委員会発行・クエスト発売)、CD「三遊亭円丈落語コレクション」1~10(アモンエンタープライズ)。落語協会分裂騒動を描いた『御乱心』の新版が近々、小学館文庫から刊行。趣味は、家の中で毎日速歩。大角ユリ子(おおすみ・ゆりこ)(左)/1947年、福島県生まれ。地元の高校を卒業後、神奈川県小田原市の会社に勤務。約3年の文通交際を経て、72年に結婚。73年に長女、74年に長男が誕生。趣味は朝夕、家の近くを速歩すること。(撮影/植田真紗美)
三遊亭円丈(さんゆうてい・えんじょう)(右)/1944 年、愛知県生まれ。明治大学文学部中退。高校時代から落語家を目指し、64年、六代目三遊亭円生に弟子入りし「ぬう生」となる。69年、二ツ目昇進。78年、真打ちに昇進、「円丈」を襲名。「グリコ少年」「パパラギ」など一貫して新作落語を作りつづけ、後進から「新作落語の神様」と呼ばれる。参道狛犬研究の第一人者でもある。著書に『円丈落語全集』全5巻予定(円丈全集委員会発行・クエスト発売)、CD「三遊亭円丈落語コレクション」1~10(アモンエンタープライズ)。落語協会分裂騒動を描いた『御乱心』の新版が近々、小学館文庫から刊行。趣味は、家の中で毎日速歩。
大角ユリ子(おおすみ・ゆりこ)(左)/1947年、福島県生まれ。地元の高校を卒業後、神奈川県小田原市の会社に勤務。約3年の文通交際を経て、72年に結婚。73年に長女、74年に長男が誕生。趣味は朝夕、家の近くを速歩すること。(撮影/植田真紗美)

 文通をきっかけに出会い、結婚した落語家の夫・三遊亭円丈さんと妻・大角ユリ子さん。45年以上連れ添った二人は、会話は少なくてもあうんの呼吸で成り立つ夫婦だ。しかし、そうなるまでには危機もあったそうで……。

出会いは文通 “変わった顔”の落語家が考えた“ラッキョウ作戦”よりつづく

*  *  *

夫:落語家だと打ち明けたのは、結婚する少し前です。

妻:大学生だとばかり。「売れてないけど、落語家なんだ」と言われたときは、ついていけないと思いました。

夫:ある朝、師匠のところに行ったら「おまえは稽古が足りない」と口うるさく言われたんです。「わかりました。今日限りをもって廃業させていただきます」。そう言って飛び出たんです。僕が家に着くなりオヤジは「やめるなら(家業の)写真屋になれ」と言う。カミサンに電話したんです。そうしたら、「写真館を継いでくれたほうがいい」と(笑)。安定した仕事のほうがいいと思ったんでしょうね。

妻:(じっと夫を見て)だったかしらねぇ。

夫:僕はオヤジに継げと言われて「それはご免だ」ととんぼ返りした。師匠も面食らったんでしょうね。すぐに実家の名古屋に電話して「わたしはなんとも思ってないから。戻る気があるなら戻してくれ」と。自分で言うのもなんですが、師匠は僕のことがかわいかった。自分にはないものを持っているというのがあったんでしょうね。一門の独演会でも、芸が円生と一番似ていない。ボンヤリとしてバカなことを言っているもんだから、一番ウケるんです。

――「敷居は跨(また)がせない」という妻の父親。結婚の挨拶へ向かう夫は覚悟を決していたが意外な展開に……。

夫:結婚の了解をもらうためにカミサンの両親に会いに行きますよね。事前に「うちの敷居は、そんなやつには跨がせない」と言っていたと聞かされてたものですから、これは大変なことになるなと覚悟しました。そうしたら「ああ、よく来た、よく来た」って、山形でしょう。言葉がよくわからないうちに親戚が集まってきて大宴会になった。

妻:ふふふ。

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