店員「もうガラケーの販売はいたしておりません」

私「困るんだよな。ガラケーって決めてるからさ……」。本当は「え~! マジですか!? ガラケーじゃないと厳しいなぁ……」と肩を落としたのだけど。

 あれ? でも店の片隅に一つだけガラケーが飾ってある!?

店員「あちらはいわゆる“ガラホ”ですね」。ガラホ? 店員はどや顔で説明してくるが、何が何やらさっぱりだ。「要するに、外身はガラケーで中身はスマホ、みたいな」と店員。「こちらをお買い求めになるガラケーユーザーも多いですよ」と、どやどや買わんかい顔。

私「……じゃあ、これくださ……いや、もらおうかな?(どや顔)」。今までガラケーのメール機能でこの連載を書いていたが、現在このガラホなるものでこの原稿を書いている。なんとも微妙な使い心地。そして周囲の反応が「あれ? ガラケー替えたんですか?」「いや、これはガラホといって……」「いやいやガラケーはガラケーでしょ?(半笑い)」と、今まで以上にマウントをとってどや顔をしてくる。

 どっち付かずなガラホのせいで原稿は難航中。どうせ使わないアプリやらを備えて、私の掌でどや顔している。これからよろしくな……ガラホ(どや顔)。

週刊朝日  2017年11月24日号

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら