綾小路:いや、いかないです。五輪までは何とか頑張ろうかなと(笑)。

林:何をおっしゃいます。あと3年じゃないですか。私の業界なんか、瀬戸内寂聴先生は95歳ですよ。

綾小路:すごいですねえ。でも、舞台に立つというのは、ちょっと種類が違うかもしれない。私も落語の師匠みたいに座ってやるんだったら80歳ぐらいまでできるかもしれないけど、道に迷ったタヌキみたいに、あっち行ったりこっち行ったりしてしゃべらなくちゃいけないので、けっこう体力使うんですよ。

林:きみまろさんは、お説教みたいなこと一切言わないでしょう?

綾小路:説教や説法はダメですね。日常に起きてる問題をうまく取り上げて、「そうよ、そういうことがあるわよね」みたいなところを探って寄せ集めてごまかしてるんですね。

林:ネタをつくるのって大変でしょうね。私も34年間エッセーを連載してますけど、昔みたいに刺さってこないんですよ、ネタが。

綾小路:私も思い浮かばないです。年齢があるんだと思いますよ。

林:きみまろさんはネタ帳をつくってらっしゃるんですね。

綾小路:つくります。今日も持ち歩いてます。忘れますから書き残しておくんですね。たとえば、最近「恋人つなぎ」(指と指をからませるように手をつなぐ)という言葉がありますよね。

林:はい、斉藤由貴さんで有名になりました。

綾小路:中高年も「恋人つなぎ」するのかな、みたいなところから発想していって、それが笑いに結びつかないかなと考えるんですね。70歳の人が「恋人つなぎ」をしたら指を骨折した、とか。

林:アハハハ……。

綾小路:「不倫」からどうやったら笑いがとれるかな、と考えたりね。「奥さんに内緒よ。約束」って小指を出したら、リウマチで指が曲がらないとか。

林:ハハハハ、おかしい。

綾小路:極端なんだけど、笑いは意外性ですからね。

(構成 本誌・直木詩帆)

週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋