気になるのが、プロ入り後の打棒だ。ちなみに、目標とする本塁打記録を打ち立てた王貞治氏の1年目は94試合に出場し、打率1割6分1厘、7本塁打。松井秀喜氏は57試合で、2割2分3厘、11本塁打を記録。荒木氏は「清宮の素質は、ルーキー時代の松井と並んでいる。比較されてもいい位置にいる」と評価する。荒木氏は現役時代、ルーキーだった松井氏と対戦しているが、当時はまだバッティングスタイルが未完成で「(一流打者になるまでには)時間がかかるかな」と感じたが、2年目には「違うバッターになっていた」という。

 野球選手の動作解析の第一人者である、筑波大体育系の川村卓准教授は「今後のことは未知数だが、高校3年時では清宮君のほうが松井選手より上回っている」と語る。松井氏の時代と比べて球種も増え、「いろんな球を打ってきたので対応力がある」からだという。

 川村准教授によると、清宮の2年時は、右足が伸び上がりながらバットを振っていたことで、スイングの軌道が波を打ち、速い球に対応できなかった。ところが3年生になると、トレーニングによる下半身の鍛錬が実ったのか、重心が低くなり、スイング軌道が安定し、速球をはじき返せるようになったという。

 課題はないのか。川村准教授は外角に逃げていく球への対応だと指摘し、左投手のスライダーや角度のあるストレートには苦戦するとみている。

「バックスイングがほぼなく、右ひじが曲がったまま打ちに行く状態です。そうすると安打にはできますが、長打にはなりません。球が背中側からくると、球を速く見ようとし、右肩が早く回転します。スリークオーター気味の左投手は打てる感じがしません」

 松井氏のような長距離打者の条件は、球をじっくり待つことと、得意なコースに投げさせることだという。「イチロー選手はどんな球でも打てるが、本塁打は出にくい。松井選手は現役時代、四球で次の打者につなげたと満足するような姿勢を見せていました。清宮君は打席での動作を改善し、経験を積んで、駆け引きができるようになることで、長距離打者への道を築けるのではないでしょうか」(川村准教授)

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