「機械式駐車場は、空いていても維持費がかかる。耐用年数は建物より短く、屋外だと約15年。設備の更新には1台100万円以上はかかる。駐車場代は入ってこないのに費用だけ大きくなれば、管理組合の予算が厳しくなる」

 さらにやっかいなのが建て替えだ。修繕を繰り返しても、いつかは限界を迎える。マンションを建て替える場合は、区分所有者らの5分の4の合意が必要だが、とりまとめるのは簡単ではない。まとまらず、多くの住民が去り、老朽化した中で一部の人だけが暮らす。こうした“廃墟”マンションはすでにある。榊さんは、これからこうしたケースは激増するとして、早めの対応を促す。

「交通の便がいい都心部以外は、廃墟マンションになる危険性がある。郊外の一戸建ても、一緒に住んでいない子どもたちにとっては、維持費ばかりかかる“負動産”。今は不動産バブルで、いつ崩壊してもおかしくない。売るなら高値の今がチャンスです」

 それでも老後は家賃を払いたくないので、持ち家がいいという人もいるだろう。前出のファイナンシャルプランナーの山崎さんは、買うなら定年直前が狙い目だという。

「80歳や90歳のときに、建て替えを迫られると大変です。定年前までは、自分の収入で支払い可能な家賃より1、2割安い部屋に住みましょう。その差額をため、定年のタイミングで築浅の中古住宅を購入するのが合理的かもしれません」

 高齢者は賃貸物件を借りられないと言われてきたが、状況は変わっている。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME‘S(ライフルホームズ)」は、賃貸物件の検索サイトに「シニア・高齢者歓迎の物件」の特集ページを16年2月に開設した。全国で約2.2万件の情報があるという。

 ほかにも公営住宅などがあり、高齢者でも住む家がなくなるという心配はしなくて良さそうだ。

 家を買うより賃貸をうまく活用するほうが、どの年代にとっても有利な時代になってきている。(本誌・大塚淳史、多田敏男)

週刊朝日 2017年10月20日号