妻:生活を変えずにいられるのは、つるちゃんのおかげなので、私のほうこそ頭が上がらない。つるちゃんに嫌だって逃げられたら、途方に暮れると思う。私にはそれぐらいの人。
――情緒や機微を感じ取れる夫妻は布石を打つ“ゲーマー”
妻:結婚した時は、結婚は墓場だとか、子どもを産むと旦那を嫌いになるとか、ネガティブな言葉をたくさん聞いて真に受けたこともあったけど、私の場合は墓場どころか天国で、子どもを産んでからも夫のことを、すごく頼れるヤツだなと思ってるんです。まだ結婚して3年ですけど。
夫:まあね。これから、いろいろ困難があるかもしれないですから。
妻:今のところは、ですね。
夫:彼女はこうやって先回りして考えるんですよ。トラブルを未然に防ぐ方法を考える。
妻:それは幸せに生きたいという私の欲ですよ。幸せに生きるためには離婚はしたくない。そのためにシミュレーションして、防ぐ手だてを考えるのは大事だなと思ってます。
夫:こうやってね、石橋をめちゃくちゃたたくんです。
妻:ゲーマーなんです。ボードゲームみたいに先を見て、布石をどこに打つか考えるのが好きなんです。つるちゃんも、それで詰められちゃっている。
夫:歩く位置まで決められてる感じはしますね(笑)。あと彼女はこうやって言語化しないと気が済まない。
妻:気持ちを言葉で説明できるのが快感なんです。スパーンとはまって、気持ちがいい。
夫:僕は感覚というか、感情のちょっとした動きに情緒を感じるんですけど、彼女はそういうえたいの知れないものでは納得してくれないですね。
妻:つるちゃんは情緒担当。人の優しさや感情、機微を感じ取れる。子どもを育てるのに、ちょうどいいんじゃないですかね。私は正論を言ったりして、生活のかじ取りをする。
夫:そうやって5年、10年と、どうなるのか。
妻:私たち物書きにミュージシャン、サブカルっぽいと思われたりしてて、どうみても……。
夫:字面がね。
妻:ミュージシャンとエッセイストだよ。
夫:二人の肩書を見た人は離婚するって思うよね。
妻:将来のことは言い切れないけど、みんなの予想にはまってたまるか。
夫:そう。僕たちがどれだけ楽しくやれるかが大事だと思いますね。(聞き手・橋岡一夏)
※週刊朝日2017年10月13日号より抜粋