年金事務所や社労士に相談できたとしても、「あなたの症状では該当しません」などと言われたりすることもあるという。

 線維筋痛症の40代の女性は年金事務所で障害の重い人の例を出されて、「あなたはもらえる見込みがない」と言われたという。

 がんで闘病中の50代の女性は、

「地元の社労士に頼んでえらい目にあった。私の場合さかのぼって年金をもらえるはずなのに、『それはできない』の一点張り。結局、その部分は別の先生にお願いしたので、二度手間になりました」

 請求にたどりつけたとしても、まだ安心はできない。障害年金は書類審査のみで判定が決まるため、丁寧な書類づくりが求められるからだ。とりわけ重要なのが「診断書」。検査数値で基準が決まっている病気はいいが、内臓疾患や心の病気の場合、前述したように、日常生活や仕事にどう影響しているかがポイントとなる。それを医師が把握し、診断書に落とし込む必要がある。

「本人に詳細な聞き取りをして、メモにまとめます。正確な状態を医師に伝えるためです」(山下さん)

「医師のOKが出れば、面談に社労士である私も同席します。私もメモを作りますが、患者が医師に伝えたいことが伝わっていないと感じたら、私が代弁することもあります。もちろん常識の範囲内ですが」(岡山の社労士、中川洋子さん)

 手続きのプロセスを見ると高いハードルがいくつも待ち構えているように見えるが、制度の存在さえ知ってしまえば、あとは専門家に丁寧に聞いていけば克服できそうだ。

 そう、公的制度すべてに言えることだが、「知っているかどうか」がすべての明暗を分けるのだ。先の白石さんが言う。

「もらえる可能性があると思ったら、絶対にあきらめないでください。きっと、どこかで道が開けてくるはずです」

 万が一の時に備えて、障害年金の存在は頭に入れておきたい。

週刊朝日 2017年9月8日号