障害の程度によって等級が定められており、それによって年金額が変わる。

 自営業者など国民年金(障害基礎年金)は1級(年97万4125円)と2級(同77万9300円)がある。会社員や公務員の厚生年金(障害厚生年金)は1級から3級までの3段階で、年金額は平均収入と加入期間で変わる。一時金がもらえる「障害手当金」もある。

 厚生労働省によると、障害年金の受給者は約227万人、支給総額は約1兆9200億円に上る。しかし、山下さんが指摘するように、請求漏れの人が大勢いるとしたら残念なことだ。

 障害年金に詳しい社労士たちによると、冒頭の男性のように、制度そのものを知らない人や、「自分には当てはまらない」と思い込んでいる人たちが多いという。

 愛知県で障害年金を専門に取り扱っている社労士の白石美佐子さんが、

「保健所や社会福祉協議会、障害者相談支援センターやさまざまな患者会など、制度を知っている人との関わりの中で教えてもらう人が多いようです。要は口コミですね」

 と言えば、東京の社労士、近藤輝幸さんも、

「よほど障害の程度が重くないともらえないというイメージがあるのでしょう。障害年金を理解するには専門知識が必要で、それも法律と医学の知識がいる。難しくて、自分の問題と思えなくなってしまうのかもしれません」

 と話す。確かにイメージが先に立ち、誤解が多いことが請求漏れにつながっているのかもしれない。

 障害年金は、障害の程度が基準を満たしていれば受給が認められる。基本的に病名は関係ない。

「身体のどこに症状が出て、それがどれだけ仕事や日常生活を不自由にしているのかがポイント。大抵の病気が対象になる」(近藤さん)

 がんや糖尿病はもちろん、腎臓病による人工透析や、大腸がんなどで人工肛門を取り付けた時も受給できる。うつ病などの心の病気や発達障害で生活に支障がある場合も同様だ。最近、認められるようになった難病も多い。思い込みで判断しないようにすることが大切だ。

 身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、知的障害者に自治体が発行する療育手帳とは、基本的に“別物”だ。

「混同している方が、まだいっぱいいらっしゃいます。片足のひざから下を切断すると、身体障害者手帳では4級ですが、障害年金では2級が認められます。違う基準で『級』が決められているのに、数字が同じだと勘違いしてしまうのでしょう」(白石さん)

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