西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、2軍選手の才能を伸ばす方法を考える。

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 プロ野球は後半戦が始まった。下位チームがどういった巻き返しを図るのか……と話を進めたいが、パ・リーグで抜け出している楽天日本ハムソフトバンクが西武を相手に勝ち越し。セ・リーグでも首位を走る広島が2位の阪神に勝ち越しと、今後も差が広がるような気配がする。

 こうなると、首位チームの監督は大局的に物事が見えるようになる。もちろん、一戦必勝が前提だが、いかに勝負の9月に余力を残せるかを考える。下位チームが明日なき戦いを強いられるのとは逆。余裕をもって起用し、勝てる試合をとることに専念できる。

 パ・リーグの首位を走る2チーム、楽天は松井裕樹、ソフトバンクはサファテと絶対的な抑えがいる。そこにどうつなぐのか。先発陣のやりくりが最重要課題となるだろう。8月は6連戦が増えるから、なおさらだ。楽天の梨田監督は、則本、岸、美馬の3本柱を中6日でキッチリ回しながら、残りの試合をドラフト1位の藤平も含めて多くの駒で回す方針を示している。まったく異論はない。特に屋外球場を本拠に持っているのだから、夏バテで肝心の9月に先発投手が疲弊していては困る。4位以下に落ちる心配はない。ならば、いかにこれから5割の星をキープし、9月にソフトバンクと対するかを考えればいい。

 オールスターのときに、ソフトバンクの工藤監督に「若手投手がうまく育ってきたな」と話したが、これからはどのタイミングで故障明けの選手を使っていくかだ。石川、松本裕など今季飛躍した若手が支えてきた。9月に復帰を目指す和田など、どうやってベテランを組み込むか、だ。

 さらに両チームともに考えるのが、9月に抜け出すために好調な選手をどう生み出すか。つまり、優勝への「切り札」をどう持つかが大事になる。昨季逆転優勝した日本ハムは「投手・大谷翔平」というカードがあった。その見極め、起用も大切になる。

 
 セ・リーグは申し訳ないが、広島がよほどのことがないかぎり連覇を果たすだろう。先発の質、打線、何をとっても、他のチームより上だ。プレーオフ制度が導入されて「包囲網」など存在しなくなった。つまり、DeNA、巨人ら下位球団は2位の阪神がターゲットになるだろう。広島は9月どころか、10月にピークを持っていく起用法もできる。それくらい余裕があってもいいし、代わって出場する選手の質も高い。

 話は変わるが、巨人が後半戦からコーチ陣の入れ替えを断行し、新たな風を吹かせた。素晴らしいことだよ。現状打破をしなければ変化はない。現場、フロントが一体となって真剣に考えなければ「動く」勇気すら持てない。期せずして浮上した山口俊の暴行疑惑うんぬんは別として、チームを改善しようという努力は球団、現場から感じる。

 球界OBとして願うのは、どんなに下位に沈んでも、ファンは楽しみに野球場に足を運んでくれる。夏休みで少年少女も多い。選手にはプロとしてのプレーを期待する。

週刊朝日 2017年8月4日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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