「私自身の経験でも、自宅に戻った患者さんのほうが痛みの出方が穏やかでした」(新田医師)

 がんは苦しみながら最後を迎えるという印象があるが、海老蔵さんによると、亡くなる1日前まで会話ができていたという。ブログからは、勸玄(かんげん)君が足をなでてくれたり、麗禾(れいか)ちゃんは痛みを書き込むシートに「私がやりたい!」と手伝ってくれたりと、親子で温かい時間を過ごせた様子が伝わってくる。看護師とともに患者を在宅に戻す支援を行う湘南記念病院乳がんセンター(神奈川県鎌倉市)のセンター長、土井卓子(たかこ)医師は、こう話す。

「症状は確かにありますが、多くは、最後まで意思疎通ができ、やりたいことができる。だから自宅で最後の時間を過ごすことは大切なのです」

 海老蔵さんは会見の席で、涙ながらに語った。

「家族の中で、家族とともに一緒にいられた時間というのは、本当にかけがえのない時間──」

 麻央さんの最期は穏やかだったに違いない。(本誌・大崎百紀、上田耕司、松岡かすみ、山内リカ、吉﨑洋夫、西岡千史)

週刊朝日 2017年7月7日号