苦しい状態にあるのは、もやし業界だけではない。流通業界では、賞味期限が短く、日々仕入れる品を「日配食品」という。豆腐、納豆、牛乳などがその代表格だ。

 その豆腐の業界でも廃業する生産者が増えている。厚生労働省によると、豆腐を製造する事業者数は、7525社(15年度)。10年間で4割以上減った。豆腐業界の関係者は言う。

「消費量は横ばいなのに、業界は疲弊している。輸入大豆の価格が高騰して、大豆の使用量を減らした質の悪い豆腐が増えている」

 日配食品は、買い手のバイイングパワー(購買力)が強いほど、食品メーカーが買いたたきにあって泣くケースが多い。

 納豆業界の関係者は言う。「日配食品は、品不足になると消費者が困るので、多めの数量を生産するんです。納豆も同じで、商品が余ると、処分目的で安く納入する業者もいる。それを基準に小売店が『別の業者はもっと安いよ』と言ってくることもある」

 小売店が契約打ち切りをほのめかしながら値下げを要求したり、人員の派遣や販売品の購入を迫ったりすることもある。

 フード連合とUAゼンセンが実施した実態調査によると、買い手の優越的地位の乱用を受けた食品メーカーの担当者は6割もいた。“イジメ”と思えるほどの悪質な事例もあった。フード連合の栗田博・政策局長は「人員の派遣は深夜や休日に関係なく求められ、おせち料理などの押しつけ販売もある。ホテル業界からディナー券などのクーポン券を50万円も購入させられたケースもありました」と言う。

 14年には、九州や関東地方でディスカウントストアを展開する企業が、店舗火災で売れなくなった商品の一部を納入業者に買わせていたことが発覚。公正取引委員会から約12億7400万円の課徴金納付を命じられた。この会社は火災保険に加入していなかった。

 生産者の苦境を多くの消費者に知ってもらおうと、日配食品メーカーの業界側も動き始めている。

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