もやし生産者協会は3月、「もやし生産者の窮状にご理解を!」と題した声明を発表した。適正価格での販売を求めて小売業界や消費者に発信し、「このままでは日本の食卓からもやしが消えてしまう」と訴えたところ、インターネットで共感を集めた。協会には「実態を初めて知った」「たしかに安すぎる」などの意見が寄せられ、「8~9割が好意的だった」(林社長)という。

 2人以上の世帯が年間に消費するもやしの量は、約35袋。林社長が訴える1袋10円の値上げをしても、年350円の負担。高いと思うか安いと思うかはその人次第だが、「値上げ支持」の機運が出始めているのは間違いない。

 豆腐業界は、品質の違いを消費者にわかりやすく伝えるため、品質を定義づけする試みを始めている。

 現在は、大豆の使用割合が多い「こだわり商品」と、安値になりやすい「汎用品」が、同じ種類の豆腐として棚に並ぶ。それを、豆腐に含まれる大豆の固形分の割合を基準に、10%以上を「とうふ」、8%以上を「調製とうふ」、6%以上を「加工とうふ」と表示する。製法によって「木綿」「絹ごし」といった種類分けも明確にする。

 業界全体で取り組みを始めた背景には、「このままでは安い商品ばかりが生き残り、おいしい豆腐が日本から消えてしまう」(全国豆腐連合会関係者)という危機感もあった。同じ悩みを抱える納豆業界も、製品の区分や定義づけをする動きを始めている。

 前出の栗田氏は言う。

「実は、苦しんでいるのは小売店も一緒。利益率1%以下で経営している店も多く、給料も安い。しかし、価格競争の激化で安価で品質の悪い食品ばかり食べていたら、最終的に損をするのは消費者。だからこそ、食べ物には最低限のコストがかかることを理解して、その価値を正しく評価できる社会にする必要がある」

 消費者が安くて安全な食べ物を望むのは当然のこと。しかし、安い食べ物にはウラがあるはず。激安商品には「なぜ?」という視線をぶつけることも大切ではないだろうか。

週刊朝日 2017年6月30日号