もやし生産関連価格の動向(2005~17年)(週刊朝日 2017年6月30日号より)
もやし生産関連価格の動向(2005~17年)(週刊朝日 2017年6月30日号より)

 もやし、納豆、豆腐といえば、日本人の食生活で当たり前にあるもの。だが、このままでは近い将来に食卓から消えるかもしれない。デフレの長期化でスーパーの安売り競争が激化し、そのあおりを受けて食品メーカーが採算割れの生産を続けているからだ。激安食品のウラにある現実とは。

「1袋100円にしてほしいと言っているわけではないんです。せめて、あと10円値上げして40円になれば、みんなが助かるんです」

 1日20万袋を生産する旭物産(水戸市)の林正二社長は、もやし業界の窮状をこう訴える。

 林社長によると、スーパーなど小売店への納品価格は、1袋(200グラム)20円台前半。しかし、原料の緑豆の価格は2005年と比べると約3倍に高騰、最低賃金は約2割上昇した。生産費は上がる一方で、もやしの店頭販売価格は下がり、現在は約30円だ。

 旭物産でも、もやし生産だけでみると赤字。カット野菜などで利益を確保し、経営を成り立たせている。

「もし、1袋40円で小売店がもやしを販売すれば、20円台後半で納品できます。そうすれば赤字を回避でき、もやしメーカーも小売店も、互いに利益を出せる。外国では、もやしが1袋100円前後の国もあり、外国の生産者からは『どうしてそんなに安いんだ』と不思議がられます。それほど、日本のもやしは安いんです」(林社長)

 林社長が理事長を務める「工業組合もやし生産者協会」によると、09年に230社以上あった生産者のうち、4割超の100社以上が廃業した。現在も、廃業を検討している業者があるという。

 なぜ、ここまでもやし業界が追い込まれたのか。日本人全体の生活が景気低迷で苦しくなり、そのしわ寄せがきていることも背景にある。

 安い食材の代表格のもやしは、特売日になれば1袋20円を切り、10円以下で販売する店もある。価格競争が激しいスーパー業界では、客寄せのために赤字覚悟の値段設定も目立つ。スーパー業界の関係者は「1袋5円値下げして300袋売っても、店の負担は1500円。広告費と考えれば安い」と話す。

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