――河瀬組の経験は他の仕事でも生きてきますか。

神野:ええ。私には、あまりNGを出さないとか、アドリブが出来るかなとか、役者としてのささやかな自負がありました。それがどんどんはがされていき、何も出来なくなる自分に出会えた。自分の心が開いていないと、心が求めていないと、出会えませんよね。

――この映画を見ていて途中から、神野さんが河瀬さんに見えてきて仕方がありませんでした。

河瀬:神野さんがお櫃を持ってきて「私、ふだんはこれに入れたご飯しか食べないの」と言うんです。「食べてみて」と。結局私はそのお櫃をもらいました。何かをいいと思う感覚がすごく似てる。この世界の何に怒ってて、何を良しとしてるかが似ているんです。

神野:でも、監督は私の100倍、いや100万倍賢いですけどね。

河瀬:でも、私が妹みたいやんね。

神野:そういうところ、あるよね。「いい加減にしなさいよ、直美」という感じね。だから可愛くてしょうがないんです。

――今日お話をうかがって、考え方も近いのが分かりましたが、お顔もすごく似ていると思いませんか。

神野:写真のお互いの顔を入れ替えられる、というアプリがあってね、直美ちゃんの息子さんが、それで2人の顔をチェンジしたんだけど、そしたらなんにも変わらなかった。髪形だけが違っていて、「これ、私の髪が短い時の顔や」って。

河瀬:これ、私の髪が長い時の顔や(笑)。

神野:顔だけじゃないんです。この間、村上虹郎君とCMを撮ったんです。最後に私が「見せてやれ、底力」って言うCM。その映像を直美ちゃんに送ったら「見せてやれ、底力」の声の部分を送り返してきた。「なんでかな」と聞いてみたら「あれ? これ私?」って気づいて。直美ちゃんが私のモノマネしてたんですよ。そんなイタズラばっかり。電車が止まって「光」のアフレコに遅れかけたことがあったんだけど、「直美ちゃんが私の声をやればいいじゃん」と思いました!

河瀬:アハハ。そうすればよかったねえ。

(構成/朝日新聞編集委員・石飛徳樹)

週刊朝日  2017年6月9日号