画期的な薬だが、問題点もある。先行のニボルマブと同様、薬価が高額なことだ。年間1400万円ほどかかり、これはニボルマブとほぼ同額だ。患者は高額療養費制度ほかを利用することにより、負担をかなり軽減できるが、国の医療財政に大きな負担がのしかかることを問題視する人もいる。

「今後は、他の薬剤の効果が期待できず、この薬の有効性が期待できる患者さんをいかに選んで投与していくべきかを考える必要があります」(同)

 これまで免疫チェックポイント阻害薬としてリードしていたニボルマブについても触れておこう。ニボルマブは、前述したとおり二次治療で選択することのできる薬だ。

 なぜ初回治療から使えないかというと、二次治療に使う抗がん剤との有効性の比較試験で優れていたが、初期治療の抗がん剤との比較試験では効果が弱かったためだ。ただし、ペムブロリズマブと違い、PD-L1の発現を確認せず使うことができる(非扁平上皮がんのみ、PD-L1の発現率1%以上が推奨)。がん研有明病院呼吸器内科部長の西尾誠人医師はこう話す。

「ニボルマブとペムブロリズマブは、同じ抗PD-1抗体で、メカニズムにほぼ違いはありません。投与条件や投与サイクルなどの違いはありますが、どちらがより有効性が高いのかは今のところわかっていません」

 両方の免疫チェックポイント阻害薬で最も注目すべき点は、効果の持続性だ。

「大きなメリットは、治療の効果が見られた場合、その後、薬をやめても効果が続くのです。実際、ニボルマブでは、治療効果を認めた後、薬をやめて、2~3年再発しない人が出始めています。今後検証していかないとわかりませんが、1~2年で治療をやめて、10年再発なしということになれば、患者さんにとっても医療財政的にも喜ばしいことです」(西尾医師)

 さらなる効果を求めて、今後は抗がん剤や分子標的薬との併用によるさまざまな試験も予定されている。

 免疫チェックポイント阻害薬の選択肢も増えそうだ。がん細胞に現れるたんぱくのPD-L1に作用する薬や、PD-1やPD-L1とは違うたんぱくであるCTLA4に効く薬も臨床試験が進行中だ。初回治療と二次治療の両方で免疫チェックポイント阻害薬が存在するのは心強いことだ。

 今後さらに薬の選択肢が増えれば、進行・再発肺がんが薬物療法で治せる時代が訪れるかもしれない。

週刊朝日 2017年6月2日号