夫:その時のお互いの第一印象ですか……そうねえ。
妻:どうだったの?
夫:そちらから、どうぞ。
妻:いえ、どうぞどうぞ(笑)。
夫:僕は一人でカウチに座ってたんです。そしたら彼女が隣に来て。びっくりしました。こんな華やかな人が僕のところへ来るなんて思わなかった。
妻:彼の第一印象は、とにかくシャイな人。
夫:人に話しかけるのが苦手なんです。
妻:その時はあんまりお話しできなかったの。お互い「どこから来たの?」ぐらい。ただ、電話番号を交換したのは覚えてる。
夫:彼女を狙ってる男性は大勢いましたから。まずは連絡先をと思いまして。
妻:でも、帰り際、私と一緒に来ていたオーストラリア人の女性が言ったのよ。「アンギャルさんって、かっこよかったわね」って。
夫:君はなんて答えたの?
妻:うーん。なんだかナーバス(神経質)っぽいし。「ちょっと鼻が大きすぎるんじゃない?」って(笑)。
――二人が最初に日本に来たのは、ともに1985年。妻は留学生として1年間、大分県の高校へ。ホテルマンとして働いていた夫は、大阪で開催された「技能五輪国際大会」に、オーストリア代表として参加し、金メダルを受賞した。
夫:その後、僕は辻学園日本調理師専門学校の教師をした後、オーストリア・リーデル社のワイングラスを日本に紹介する仕事に就いたんです。
妻:私はオーストラリアに戻って大学を卒業。日本企業関連の、リゾート開発の会社に入ったんです。92年5月に東京に転勤になり、来日翌日に、彼に出会ったんですよ。でもまさか、その翌朝に電話してくるとは思わなかったわ(笑)。
夫:早く連絡しなくちゃ、忘れられちゃうもの。
妻:しかも最初の一言が「東京の南から来た人です」。
夫:君が御茶ノ水に住んでいて、僕が都立大学だったから「東京の南の人」って言ったんだよ。
妻:それでご飯でも食べましょうって。
夫:彼女の誕生日が5月13日で、ほんの数日後だったんです。おかげで誘いやすくて助かった! 銀座にあった、ホテル西洋銀座の地下にあるレストランに行ったのを覚えてます。