アナとして活躍するだけでなく、アイデアマンでもあった。視聴率を上げるため「ホームランリポーター」という企画を考えた。若いアナウンサーを外野席に立たせ、飛んできたホームランをキャッチさせるというもの。いざ打球が飛ぶと、「打球が伸びる! ○○(アナウンサー名)もっと右! いや左!」と珍実況した。
声があまりに大きく、他局のマイクに声が入り苦情が来たことも。試合中の選手にまで届いたらしく、捕手が実況席前まで来て「いい加減にしろ!」と言われたこともあったらしい。
また、コナミの人気ゲーム「実況パワフルプロ野球」でも実況を担当した。94年に発売した1作目から2001年発売の8作目まで(2作目を除く)起用された。プロ野球を見ていなくても、安部さんの声を耳にしたことがある人は多い。
コナミの担当者は、
「当時、より楽しく、熱い実況でゲームを盛り上げてくれる方を社内で検討したところ、満場一致で安部さんに決まりました」
と明かす。
近鉄で選手や監督として活躍した佐々木恭介さん(現・大和高田クラブ監督)は、プライベートでも交流があった。
「とにかく野球が好きだった。あのときの一球はどうだったのか、あのときにどうしてやられたのかなど細かく覚えていた。(79年の)日本シリーズの江夏との対戦はよく話しましたね。近鉄バファローズが大好きで、実況も近鉄に100%寄っていましたね。現役時代はしょっちゅう発破をかけられました」
目の手術で入院した数年前に、お見舞いで会ったのが最後だという。
「ゆっくり休んでください。向こう行ってもペラペラしゃべってくださいよ」
※週刊朝日 2017年4月28日号