邦信さんの祖父は、こうして伝わってきた清光など信玄由来の刀剣をはじめとした宝物を山梨銀行(山梨中央銀行)に預けていた。その後、父は清光を自宅に持ち帰り、厳重に管理できる地下室をつくって、そこに保管した。自宅に刀があることは一切口外せず、武田家の守護としてひそかに、そして厳重に守ってきた。しかし、それではあまりに物騒なのと温度・湿度などの管理が難しいこともあり、武田神社で管理してもらうことにしたのである。

「改めて見ると、これが470年余前のものとは思えないくらいきれいですね。この刀を信虎が大井夫人に授けた場面を想像すると、身震いします。その歴史を考えると、とても重い刀ですよね」(同)

 戦国時代の最中に多くの刀を奉納した信玄。それは戦の勝利と武田家の存続を願ってのことだろう。一度は途絶えたと思われたが、今も武田家が続いているのは、清光が守っているからかもしれない。(ライター・植草信和、本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2017年3月31日号