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ミッツ・マングローブ「北の非道に命を張ってくれた人(アイドル)たち」

連載「アイドルを性せ!」

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表現として不謹慎な場面や事象かもしれませんが、アイコニックな『廻り合わせの妙と性(さが)』を持った人は出てくる (※写真はイメージ)

表現として不謹慎な場面や事象かもしれませんが、アイコニックな『廻り合わせの妙と性(さが)』を持った人は出てくる (※写真はイメージ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、歴史的悲劇が生んだ「アイドル」を取り上げる。

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 歴史モノには滅法弱い私ですが、いつの時代もどこの国でも、天下と権力を巡る裏切り・濡れ衣・腹いせ・見せしめは繰り返すということでしょうか。それにしても正男ちゃん、大河ドラマであれば軽く3週は引っ張るだろうところを、あんなにも呆気なく殺(や)られてしまうなんて。

 さて、このような社会的・政治的ニュースにおいてもアイドルは存在するというのが今週のお話です。『北のゆるキャラ・正男ちゃん』も、緊迫する北朝鮮情勢に、ひと時の癒やしを与え得るアイドルでした。表現として不謹慎な場面や事象かもしれませんが、アイコニックな『廻り合わせの妙と性(さが)』を持った人は出てくる。むしろ生息フィールドがネガティブな分、彼らこそが『真のアイドル』と呼べるのかもしれません。将軍様関係のニュースを読み上げる北のオバちゃんアナウンサー、大韓航空機撃墜事件の蜂谷真由美こと金賢姫、オウム事件の上祐史浩氏や横山弁護士、イメルダ夫人に尾上縫……。スキャンダルや犯罪、歴史的悲劇の傍らには、それらを象徴する『選ばれし逸材』が常にいます。

 今回の『正男暗殺』により、北朝鮮が抱える時代錯誤な病みと危うさを改めて痛感した次第ですが、北朝鮮と日本と言えばやはり拉致問題です。この未解決の国家的犯罪による悲劇に想いを馳せる時、どうしても忘れ難い人物がいます。拉致被害者の曽我ひとみさんです。2002年の小泉訪朝により5人の帰国が実現した当初、曽我さんは日本のメディアが把握する『リスト』には入っていない、言わばノーマークの人物でした。しかし我々日本人は、『拉致』に対する想定の向こう側を、彼女を通して知ることとなります。

 羽田に着いた際の曽我さんに笑顔はありませんでした。いっしょに拉致されて行方知らずになったままのお母様の存在、向こうで結婚したアメリカ人のご主人と娘さんたちが、北に残され事実上の人質となっている状況。ただ本人さえ帰国すれば『めでたしめでたし』なわけではないことを、私たちは認識し途方に暮れました。


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