2015年当時の流山おおたかの森駅周辺 (c)朝日新聞社
2015年当時の流山おおたかの森駅周辺 (c)朝日新聞社

 いまや若い人はもちろん、高齢者もその利便性を求めて大都市へ移り住む時代。地方の人口減少が問題化されるなか、効果的なブランディングで人口増加させる街もある。どのように都市への流出を防ぎ、人口を増やしたのか。その手法を探る。

 千葉県流山市は若いファミリー層の取り込みに成功し、10年以上連続で人口が増加している。2016年全国転入超過数では、東京都特別区や政令指定都市が上位を占める中で、8位に食い込んだ。

 母になるなら、流山市。

 都内のJRや地下鉄の駅などで、このキャッチコピーのポスターを見たことはないだろうか。流山市の常住人口は10年前と比べて、約2万5千人増えた。そのうち、子育て世代にあたる25~39歳とその子供の年齢に当たる0~9歳の層の増加が目立つ。

 流山市は04年、当時としては珍しい「マーケティング課」を立ち上げた。05年につくばエクスプレスの開通を控え、沿線の近隣自治体と「移住者獲得」の競争になるのは明白だったからだ。

 同課の河尻和佳子広報官は、

「流山市は決して財政が豊かなわけではありません。優先順位を決めてターゲットを絞ることで、効率的で効果的なブランディングを図った」

 と語る。多くの自治体は常住人口の数字を追ったが、流山市は「共働き子育て世代」に絞った。

 その世代向けの政策の代表例が、流山おおたかの森駅と南流山駅の前にある送迎保育ステーション。市内の指定保育園をバスで結んで送迎するシステムだ。このほか、市は「ママが自己実現できる街」として、15年から創業スクールを開講。南流山駅前にワークスペースを設けている。

 市内中心部に位置するつくばエクスプレス・流山おおたかの森駅で降りると、駅周辺には、子供向けのクリニックや医院の看板をいくつか見かける。ベビーカーを押していた石澤裕佳さん(30)は、昨年5月に東京都足立区から流山市に引っ越してきた。

「流山は子育てしやすい街という印象がありました。市内にはいろいろな施設ができ始めて、ワクワクします。都心にある夫の職場への通勤も便利です」

 0歳と2歳の子を連れていた女性(30)は、昨年10月に千葉県八千代市から引っ越し、一戸建ての住宅を購入した。

「2年ほど前から注目していました。子供たちには優しい街だと思います。産休中ですが、職場復帰後もアクセスがしやすいので安心です」

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