開業以来、乗客の事故死がゼロという今の新幹線ブランドはその後、長い時間をかけて確立されたのだ。

 今から見ると、滑稽に思える事件もあった。64年12月25日号「あっちもこっちも長髪騒動」では、男子の長髪を禁じた校則に対する高校生の「反乱」を報じた。ここで言う長髪は“ロン毛”ではなく、坊主頭以外の髪形。当時は多くの学校が男子に坊主頭を義務づけていたのだ。大阪府箕面市の私立箕面学園高校ではこんな騒ぎがあった──。

<長髪騒ぎは十二月四日朝、一時限の終了後、二年生の数名が各教室をまわって生徒を校庭に集め、「長髪を認めろ、イエスか、ノーか」と学校側に回答をせまったことがはじまりである。(中略)約千人の生徒が校庭にプラカードをたてて坐りこみ、窓ガラスへ石を投げつけ、ホウキや棒切れをもって駆上がり、三階のガラスをたたきわった>

 機動隊が出動し、ようやく収まった。

 このほか時代を感じさせるのが64年6月26日号の「牛乳はうすくなったか?値上げしたのに足りない脂肪分」。当時、牛乳の値上げが全国的に広がり、<さいきん、どうも水っぽくなったんじゃないか>という風評も出ていた。これを受け、本誌は各メーカーの牛乳を買い集め、大学の研究室の協力を得て脂肪率を測定した。「暮しの手帖」の名物企画「商品テスト」を思わせる試みだ。その結果は、

<ごらんのようにMR、MJ、Yの三メーカーが売出している普通牛乳は、そろって、ほとんどが厚生省の定めた成分規格三・〇%を割る結果となった>

「低脂肪」が売りになる現代からすると、隔世の感があるが、当時は良質な栄養の摂取が社会の重大関心事だったのである。(一部敬称略)

週刊朝日 2017年3月3日号より抜粋