近年、糖尿病の診療では血糖値が高いだけでなく、血糖値の変動が激しいことも危険因子として重視されている(※写真はイメージ)
近年、糖尿病の診療では血糖値が高いだけでなく、血糖値の変動が激しいことも危険因子として重視されている(※写真はイメージ)

 近年、糖尿病の診療では血糖値が高いだけでなく、血糖値の変動が激しいことも危険因子として重視されている。患者の生活に即して血糖値の変動を把握する検査機器に、低価格で使いやすい新機器が登場した。

 人間の生命活動は、血液中のグルコース(血糖)を燃料として全身の細胞に取り込むことで正常に維持される。糖尿病を発症し、膵臓から分泌されるインスリンの量や作用が不十分になると、燃料として利用されずに余ったグルコースが血液中にあふれてしまう。

 糖質の多い食事のとりすぎや運動不足などによって血糖値が高い状態が続くと、血管の内側の細胞が「糖化」と呼ばれる変性をきたして動脈硬化が進む。こうして細い血管が侵されれば網膜症、腎症、神経障害、太い血管が侵されれば心筋梗塞、脳梗塞などの合併症の原因となる。

 一方、糖尿病患者は低血糖を起こしやすい。これはインスリンだけでなく、下がりすぎた血糖値を上げるグルカゴンというホルモンの分泌も不足するためだ。低血糖を起こすと、強い空腹感、意識障害、集中力の低下、動悸などの低血糖症状を招く。重症低血糖を繰り返せば、心筋梗塞や認知症などのリスクが増す。

 そのため、糖尿病患者は高血糖や低血糖が起こらないよう血糖値を正常範囲に保つ必要がある。近年、こうした血糖値の変動を把握する手段としてCGM(持続血糖モニター)という検査機器が注目されている。

 東京慈恵会医科大学病院講師の坂本昌也医師は、こう指摘する。

「最近の研究では、受診のたびに測定する血糖値が高いだけでなく、日常生活で本人の自覚がないまま低血糖(無自覚低血糖)を繰り返したり、血糖値が大きく変動したりすると合併症のリスクが増すことがわかっています。血糖値は、食事や運動、ストレスなどによって大きく変動します。CGMは患者さんの日常生活に即して血糖値の変動パターンを視覚化し、より適切な治療薬の処方や生活改善の指導をおこなううえで有用です。最近、低価格で使いやすい機器が発売されたことから、広く普及していくとみられています」

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