もちろん、官僚にとっても天下り先として「早稲田大学教授」は魅力的なポスト。吉田氏にとっても悪い話ではなかったのだろう。

「やはり名誉。名も知れぬ大学よりは、早稲田大学教授というネームバリューは使い勝手がいい。本を出しませんか、テレビに出ませんかといった引きがあるでしょう。黙っていても学生が集まる大学だから、雑務もそれほど多くはないと思います」(大学関係者)

 冒頭の大槻氏の怒りは、こうした背景を踏まえてのこと。いくら大学に予算がほしいからといって、教授として採用していいのか、早大も足元を見られたものだと言いたいのだ。

 情けないのは、監視委のヒアリング調査に対し、早大側は文科省の人事課の書いたシナリオに沿ってウソの回答をしたこと。本当は、文科省側から早大へ吉田氏の再就職を要求したにもかかわらず、逆に早大側が求めたように説明するよう指示されていた。

「人事戦略上、高等教育行政に詳しい人材を求めたいと考えた」として、以前、早大に在籍した文科省OBに仲介を依頼。吉田氏を紹介され、退職翌日に連絡を取ったという虚偽のシナリオが「想定問答」に書かれていた。もちろん、この文科省OBはまったく関わっていない。

 1月20日、早大の鎌田薫総長は記者会見で釈明した。

「形式的な調査なので内容に沿った供述をしてほしいと文科省から依頼があったので、(早大の人事担当者は)最初は意向に沿った回答をした。文科省が違法な指導をすることはあり得ないと思っていた」

 まるで被害者のようなふるまいで、「不適切な利益供与・便宜供与を求めたこともなければ、受けたこともない」と強調した。だが、早大の関係者の目は厳しい。

「行政手腕のある人に来てもらうメリットは実際あるのでしょう。でも、ルール違反を犯しては、文科省と癒着して受け入れたと勘繰られても仕方ない」

週刊朝日 2017年2月10日号より抜粋