落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「解散」。
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いつも独りで高座に上がってる噺家からしてみると「解散」って面倒くさいだろうなと思う。「離婚は結婚の何十倍も時間と労力を使う」と聞いたことがあるが、「解散」も同じだろうか。
噺家は独りだが、何人もの登場人物を演じる。お馴染みなところで、熊さん・八っつぁん・大家さん・横丁のご隠居さん・与太郎。のべつ顔を合わせる5人は、言わば落語の国の超人気ユニットだ。
ところが「もう解散しよう!」なんてことを誰かが言いだすと噺の幕開けで……。
大家「今日集まってもらったのは他じゃない。実は……そろそろ我々もそれぞれの道を歩んだらどうかと思うんだ……」
熊「それって……解散? 何でよっ!? いーじゃん、このままで! なぁ、八公?」
八「仕方ないんじゃないかな」
熊「何でだよっ!?」
八「前から思ってたけど……キャラかぶってんだよっ! 俺とお前っ! 同じ職人だし。いろんな落語出てるけど、どっちがどっちだか分からないって言われるし!!」
熊「でも、俺、暮れは『芝浜』があるから……」
八「それも腹立つんだよ! 何でお前だけ人情噺の主役張ってんだよ!」
大家「まぁまぁ。私もご隠居さんと若干のキャラかぶりを気にしてるところでね……」
隠居「……あ、それでスタッフにあんなコト漏らしてたんだ」
大家「!? あんなコト!って?」
与太郎「うん! メイクさんが『これ絶対内緒の話なんですけどね』って教えてくれたの!」
大家「うるさいっ、馬鹿っ! ろくに店賃も入れないくせに余計なコトをペラペラと!」
与太郎「あたいは別に解散でもいいよぅ。最近はコメンテーターの仕事も増えてきたし。率直な切り口のコメントが評判いいみたい」
八「何も考えてないだけだろ!!」
大家「それはそうと、ご隠居さん……糊屋の婆さんとの一件は片付いたんでしょうね?」
隠居「えっ(焦)……?」
八・熊・与太郎「なになにっ!?」
大家「お前たち、知らないのか?この人、20年前から糊屋の婆さんといい仲なんだよ! 妻子がある身でありながら!!」
八・熊・与太郎「まじか!? ゲスいなーっ!!」
隠居「実は……来週、記者会見……」
全員「は!?」
隠居「写真、撮られました……実家に連れていったところを」
全員「アホかっ!? 実家って!! 解散どころじゃないじゃんっ!!」
隠居「(泣)……とりあえず、皆さんにはご迷惑かけますっ!!(土下座)」
ということで、ラクゴスターズ(仮)は解散前に無期限活動休止になりました。充電期間にメンバーの人間関係が修復されるとよいのですが……。ファンのみんなが待ってます。早く帰ってきてね。
※週刊朝日 2016年12月30日号