メイソンが語るピンク・フロイドの歴史
メイソンが語るピンク・フロイドの歴史

 来年、デビュー50周年を迎える英国のカリスマ的ロックバンド「ピンク・フロイド」。超レア音源・映像を集めたボックス・セット「アーリー・イヤーズ1965-1972」を11月、リリースした。結成当時からのメンバーでドラマーのニック・メイソンに独占インタビューした。

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──2年前、最終アルバム「永遠(TOWA)」をリリースし、ファンにさよならを言いました。今回のリリースはいつ決まったのですか?

「長い間案を練っていたんだ。オリジナル・アルバムの最高と言えるバージョンをリリースするという案だったんだ。僕らがどうやってアルバムを作ったのか、初期のころどんなことをやっていたのか、以後それがいかに発展してきたのかについて知ってもらうのもいいんじゃないかと思ったんだよ。最終的には原案とはかけ離れたものができあがったんだ」

──1965年から72年という時期に絞った理由は? 72年といえば「狂気」がリリースされる前年ですが。

「『狂気』までは、ピンク・フロイドはアンダーグラウンド・バンドというイメージがあった。『狂気』以前の僕らは、結成期と言える重要な時期にいたと思う」

──「狂気」はピンク・フロイドの最高傑作とされていますが、あなた方自身にとっての最高作ですか?

「自分たちが達成した最高傑作というふうには考えていない。売上数からいったら『ザ・ウォール』のほうが上だし。僕のお気に入りのアルバムは『神秘』なんだ。あの中に収められている多くの要素がのちに『狂気』へと引き継がれることになったから」

──アポロの人類初月面着陸の映像にピンク・フロイドの音楽が使用され、人類の歴史の一ページにピンク・フロイドの名前が刻まれたわけですね。依頼はNASAから?

「いいや、BBCから僕らの音楽を使用したいという依頼がきたんだ。テレビで生放送したときに使用したか、またはその映像をあとで流すときか、どちらかだったと思う。月面着陸のサウンド・トラックを作ってくれないかという依頼だったんだ。ただ僕はそのときの制作については一切覚えていないんだ。放送された素材も見て認識はしているが、まつわる思い出はないんだよ。いかに録音したかについては覚えていない」

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