「怒るシーンとか、自分では振り切って芝居をしているつもりなのに、演出の人からは、『もっと!』と要求されることが多いですね。で、実際オンエアを観てみると、『もっと怒ってたはずなのに、振り切れてないなぁ』ってなる。初めからはじけた芝居を提示して『それ、いらない』って言われてみたいんですけど、恥ずかしいんですよね。大体スベるし」

 役者以外にも、グループ魂というバンドでは“バイト君”という名前で、大道具を担当している。

「僕は、自分のことを役者だとは思っているけれど、芸能人だとは思っていません。芸能人って、“自分を演じることができる人”なんじゃないかと思うんですが、僕は他人に自分の何を誇張していいのかわからない。“バイト君”はだからとても難しいです。僕が素になったら、ただ、にやにやしたおじさんなので(苦笑)」

 見た目は大人なのに、話すときは迷子の子供のようで、それがある意味独特の個性につながっているように見える。役者としての村杉さんが、次に“振り切れよう”とするのは、「キャバレー」。1929年、ナチス台頭前夜のベルリンを舞台にした傑作ミュージカルだ。松尾スズキさんの演出では、10年ぶりの再演となる。

「ポップで、笑いもちりばめられているのに、実はすごく怖い話です。前回、僕は笑い担当みたいなところがあって、舞台を観た古田新太さんから、『初めてセミで笑ったよ』と褒められた。前より王道な感じになりそうなので、笑いを抑えた分、怖く見せたい。でも笑いもほしいなぁ……」

週刊朝日 2016年12月9日号