作家の室井佑月氏は、アメリカ大統領選や韓国大統領のスキャンダルに関する報道を見て、日本のメディアについて思うところがあるという。

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 11月14日のNHKニュース。<安倍内閣を「支持する」55%、「支持しない」26%>だって。

 先月の調査より、支持する人が5ポイント上がって、支持しない人が7ポイント下がった。

 なんでこうなる。おかしくないか?

 TPPを今の国会で承認することへの賛否は、「賛成」が18%、「反対」が24%、「どちらともいえない」が48%。

 今の国会で審議されている、賃金が下がった場合に年金支給額を引き下げることなどを盛り込んだ年金制度改革関連法案について、「賛成」10%、「反対」49%、「どちらともいえない」が33%。

 南スーダンでの自衛隊の駆けつけ警護、「賛成」が18%、「反対」が42%、「どちらともいえない」が32%。

 天皇陛下の退位についてどのようにするのが望ましいのか。「特別法を作って、いまの天皇陛下に限って認める」21%、「皇室典範を改正して、今後すべての天皇ができるようにする」58%、「退位は認めず、現在の制度の範囲内で対応する」11%。

 自民党が党総裁の任期を連続3期まで延長することについて。「賛成」27%、「反対」31%、「どちらともいえない」35%。

 つまり、現政権を肯定している人より、否定している人のほうが多い。世論調査の結果が解せない。

 
 この結果は、新聞の世論調査でもいえる。

 あたしはなぜか、アメリカの大統領選とこのことが被ってしまう。アメリカの大統領選、世論調査はずっとヒラリーのほうが数ポイント上だった。なのに、ふたを開けたら結果がひっくり返った。

 あまりニュースになっていないが、選挙中、トランプはこのことを批判しつづけていた。「嘘ばかり報道する」と。「不正選挙がおこなわれている」とまでいっていた。

 実際のところ、トランプがいっていたように、メディアは嘘ばかり報道し、世論を偏った方向へ煽ったのだろうか。

 それはわからない。あたしが考えてしまうのは、日本はどうなのか、ということだ。

 新聞社やテレビ局の幹部、御用コメンテーターが、安倍政権と懇意にしているのはもはや秘密にもなっていないのだ。

 お隣の国、韓国で大問題になっている朴大統領と崔順実についてもそうだ。

 崔が文化体育観光部(日本の文部科学省にあたる)の利権に絡んでいたのは事実で、スポーツ関連組織が不正の温床となっていた。崔は平昌五輪の会場建設や運営に口を出し、その利権も貪(むさぼ)っていた。

 じゃあ、この国はどうなんだろう。オリンピック費用がなぜ3兆円にまで膨らんだんだろう。韓国ヘイトみたいなニュースを流すだけじゃなく、そちらをなぜ追及しない? お隣の国のこの問題でわかったはずだ。文部科学省、その中でもスポーツは利権の温床になりやすいと。

週刊朝日 2016年12月9日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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