最も割を食いそうなのは第3のビールだ。仮に55円となれば税金は倍増。しかも「消滅」という悲しい末路をたどる予感も生まれる。第3のビールは、低迷する業界、そして節約派の救世主だ。売れ筋で言うと、キリン「のどごし生」やサントリー「金麦」、アサヒ「クリアアサヒ」、サッポロ「麦とホップ」など、本誌を読みつつ世話になっている方も多いはずで、「庶民いじめ」との声もあがりそうだ。

 一方で、実は「ビール減税」の風向きを感じた業界はすでに動き始めている。ビール商品への傾倒だ。

 サントリーは昨秋に「ザ・モルツ」を発売。アサヒは今年3月、麦芽使用比率を通常の1.2倍、糖質は50%オフの「アサヒ ザ・ドリーム」を7年ぶりのビール新商品として出した。キリンも今年から地域の好みや特徴を踏まえた47都道府県ごとの「一番搾り」を企画。各社が需要掘り起こしに向けてテコ入れと強化をスタートさせたほか、近年は定番商品と異なる地ビールのような味わいのクラフトビールも展開し始めている。

「ビール減税」を見据えた動きだが、ここまで積極的にシフトし始めたのはなぜか。ある業界関係者は“ビールシフト”のウラ事情についてこう告白する。

「酒税より前に、ビール需要が縮小する危機感がある。ワイン人気などを考えると、相対的にビールの魅力が低下しています。ビールには発酵や原材料、ホップの種類も多様で、例えばドイツでは修道院ごとにビールがあるなど、世界には多種のビールがある。それなのに日本では、のど越しが特徴の『ピルスナータイプ』しかなかった。大手各社がほぼピルスナーしかつくってこなかったんです。その結果、需要が伸びず、“新橋のオッサンの酒”のイメージになった」

 では向かい風が吹きそうな発泡酒や第3のビールはどうなるのか。この関係者はこう続ける。

「業界が努力をしてきた分野だが、各社とも既存ブランドの季節限定品を出すのにとどめ、新商品は手控え始めている。糖質オフやプリン体オフなどの機能性に対する需要、強いブランドには固定客がいるので、そこは続行するはず」

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