ただ追い風ムードのビールとて安穏としてはいられない。というのも、例えばアサヒが7年ぶりに新発売したビール「ザ・ドリーム」がなかなか消費者の心をつかめていない、というのだ。

 同社によると、年内の販売目標は400万箱(1箱は633ミリリットル×20本換算)と設定したが、10月末時点で計140万箱。小路社長も「計画どおりに行っていない。(苦戦の原因は)糖質50%オフという点を強調すると、どうしてもビールという認識でなかなか受け入れてもらえておらず、ビールではないんじゃないかと思っておられる方がまだたくさんいる。ビール購入者は(特定ブランドを購入する)ロイヤルユーザーが多いため、需要創出には時間もかかる」とする。

 悲喜こもごもの酒税改正となりそうだが、まだまだ先の話で、そもそも実現するのか。ある大手紙記者はこう予想する。

「財務省にとっては、第3のビールでいいやという風潮になると、同量が売れても税収は少ない。与党の宮沢洋一税調会長は『時期と何段階で上げていくというのは書き込みたい』と宣言しているので、今年は時期については政府大綱に入るでしょう。ただ1年後の消費増税すらできなかった政権や財務省が、10年後の酒税改正を本当にできるのか。最後は『景気や業界の状況をみながら』という一文も入れ込むが、政治は世論も見ている。結局、第3のビールについてもなかなか決められないのでは」

 ビール党には気をもむ話題だが、茶番は御免被りたい。与党が演ずる“田舎のプロレス”でないことを祈るばかりだ。

週刊朝日 2016年12月9日号