大人の便秘は、生活習慣や食生活の乱れで起こることが多いが、子どもの便秘は、体全体や腸の成長のスピード、食事(母乳・ミルク、離乳食)の状態、年齢、トイレトレーニングなど、さまざまな要因が関係。原因がわからないケースも多く、母乳を飲んでいるときから便秘になる子もいる。

 便秘のメカニズムも、子どもと大人では異なる。中野医師はこう解説する。

「大人はS字結腸や下行結腸に便がたまる便秘が多いのですが、子どもは直腸に便がたまる“直腸性便秘”がほとんどです」

 通常、大人も子どもも、肛門に近い直腸には便が存在しない。食事をとることで反射的に腸が収縮する蠕動(ぜんどう)運動が起こり、便が下りてくる。直腸の壁が便で押し広げられた刺激が脳に伝わると、“もよおす”、つまり便意が生じる。

 便秘になると排便で痛い思いをするので、子どもはトイレを我慢するようになり、便秘が慢性化。直腸は便をため込みどんどん拡張し、便が大量にたまらないと便意を感じないようになる。そうやって便秘が悪化する悪循環に陥るという。

 便はときにビール缶やペットボトルの大きさで、“お産をするように排便する”と話す親もいるそう。また、硬い便が栓のように詰まる「便塊閉塞」や、下痢便が硬い便と腸の壁の間を伝って漏れ出る「漏便」(遺糞症)が起こることもある。

 そんな子どもの便秘を治すにはどうしたらいいか。中野医師は「治療は“排便パターンをつける”のひと言に尽きる」と述べる。

「食物繊維や乳酸菌の摂取など大人の便秘対策は予防や軽度の便秘の改善にはなりますが、ある程度進行した便秘では効果が期待できません。治療のタイミングを逸して、こじらせてしまうおそれもあるので、すぐに治療を始めてほしい」(中野医師)

週刊朝日  2016年10月7日号より抜粋