寄付の額にも色濃く表れる「愛塾心」。塾への現金寄付、15年度の実績は80億円余り。早稲田の36億円の2倍以上になる。三田会として多額の寄付をするのは連合三田会だ。連合三田会大会での大会券の売り上げや広告料、ブースの出店料などから「大学の周年事業では、おそらく億の単位で寄付しているはず」と当番経験のある塾員は語る。

 08年の創立150年の折には、塾が250億円を寄付の目標額としたが、最終的には約285億円の申し込みがあった。あるゼネコンの社内三田会は、このときは会として目標額を決め寄付を募ったという。「周年事業に関する受注につながればという狙いも少なからずあった」と同社社員。

 150年はオール慶應の「社中協力」シフトだったが、周年行事に関する寄付の場合、基本的には関係性の強い三田会が中心となって動く。17年に100年を迎える医学部の新病院棟建設事業には医学部卒業生による「三四会」が、翌18年の慶應義塾高校開設70年事業には同校の三田会が、募金活動を進めているという。

前述の島田さんは自らの研究分野に照らし合わせ、「三田会は宗教の構造に非常によく似ている」と分析。福沢諭吉という神格化されたシンボルの存在があり、相互扶助が根付いている点をその理由に挙げる。また慶應は親子代々通う塾員も多く、強い愛塾心と同時に人的ネットワークが受け継がれていくことも大きい。

 さらに三田会ならではの強みをこう語る。

「宗教や政治団体はいずれ高齢化が進み衰退していくが、三田会は同窓会という特性上、毎年若い塾員が加わり、常に新陳代謝される。組織としてどんどん強くなる構造になっている」

週刊朝日  2016年10月7日号より抜粋