宿も紹介したい。

 集落と反対側にある隔絶された別天地の趣がある福原浜の島宿「三虎」は、かつて日本3大ユースホステルとして名高かった宿。砂浜は“貸し切り状態”で、目の前には人工物がほとんど見えないという、瀬戸内海でもまれに見る、恵まれた立地だ。

 食事は、直接契約している漁師たちから仕入れた魚介類で、基本的に生きたものしか使わない。小鉢類にはじまり、刺し身、蒸し物、焼き物、煮物、揚げ物などが次々と並び、多くの客が食べ残してしまうほどのボリュームだ。

 ご主人は、定番料理を守りながらも新しい味覚を追い求めている。最近のお気に入りはアクアパッツァだ。昼食だけの利用もできるが、宿泊して潮湯につかりながら星空を見上げ、昇る朝日を拝むのも乙なものだ。フランスのイラストレーター、フロラン・シャヴエが三虎に2カ月近く滞在して書き上げた、イラスト満載の真鍋島の紹介本(フランス語)によって、近年ヨーロッパの旅行者が増えている。

週刊朝日  2016年9月23日号