漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」(フジテレビ系 火曜22:00~)の猟奇的な殺人鬼役を演じた佐々木希について、猟奇とヤンキーは“混ぜるな危険”だという。
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口に飴玉を詰め込まれた少女の死体。舞い散る飴の包み紙。次々と起こる異常犯罪を追う捜査官・藤堂(波瑠)。追いつめた犯人を黒いガラス玉のような瞳で凝視し、つぶやく。「あなたの、その顔が見たかった」
彼女は知りたいのだ、人間が人殺しになる境界線を。殺人衝動のスイッチが押されるメカニズムを。なぜなら彼女もまた「いつか必ず人を殺す」と言われた「怪物」だから。プロファイリングで捜査協力する心療内科医・中島(林遣都)も、また「怪物」だ。「加害者に被害者と同じ苦しみを与えてやりたい」。彼は凶悪犯を洗脳し、自分が犯した罪と同じ方法で自殺するように仕向けていた。藤堂と中島は、まるで「羊たちの沈黙」のクラリスとレクター博士だ。真夏の夜にふさわしい悪夢のような物語。
しかし、ここにとんでもない殺人鬼が登場。3、4話ゲストの佐々木希である。彼女は、女性たちの皮膚を剥いでボディスーツを作ろうとする。人の皮でハンドメイドと言えば「悪魔のいけにえ」のレザーフェイス。ご存知、猟奇犯罪界の横綱クラスですよ。それを演じるのがノゾミンって!
獲物が、うっかりボディスーツを飾ったマネキンを転がしたら、「何やってんだ、てめぇ~! せっかくここまで作ったのにぃ」と、押されましたよ、ノゾミンのスイッチが。ってそれ、殺る気スイッチじゃなくて、ヤンキースイッチだから。さらに思いっきり棒読みでお見舞いされる「ふ~ざ~け~やがって~!」。ノゾミンがしゃべればしゃべるほど、見てるこっちのお笑いスイッチ押されまくりで、もう勘弁してください。
完璧な美を誇る元モデルの殺人鬼なんて、菜々緒にまかせておけばよかったのに。出て来た瞬間、1秒で犯人だってバレるけど。真夏の夜に、わかったこと。猟奇とヤンキーの食い合わせの悪さ。混ぜるな危険。
※週刊朝日 2016年9月2日号