獅童:金髪にしたときは、こっちはちょっと怒られることを期待してたのに、「あら、いいじゃない」って、一緒に記念撮影させられたり。僕は冴えない顔して写ってるんです(笑)。「気分はロッカー」と思ってライブハウスで歌ってたら、見たことあるおばさんが踊り狂ってて、よく見たらそれが母親だったり(笑)。だから不良にはなりきれなかったんです。

林:アハハハ。お母さま、おもしろい。

獅童:僕の誕生日会をやっても、お袋が主役になっちゃうんですよ。ホットパンツにピンクのTシャツ着て、ストリップ風の踊りを披露したりするんで。僕のファンの方は、いつの間にかお袋のファンになってましたね。出待ちしている若い子に、「獅童を待っているんですか。すいませんね」とか言って、住所と名前を聞いてあとでお手紙を出したりしてたんです。3年前にお袋が亡くなったときに、ファンの方がその手紙を持ってきてくださいました。お袋は僕に役がつく前から、「獅童を応援してください」っていろんな人に頭を下げてくれてたんだと思います。

林:素晴らしいです。中学、高校になるにつれてどんどん背が高くカッコよくなる獅童さんを見て、お母さま、うれしかったでしょうね。

獅童:歌舞伎はあんまり大きいとダメなんです。道具の寸法もあるし、着物も合わないし。うちは女形の家系で祖母は僕を女形にしたかったこともあって、頭を抱えてましたね。目も小さいし、引っ込み思案で何をしゃべってるかよくわからないし、「この子は歌舞伎には向かない」って親戚中から言われて、コンプレックスのかたまりでした。

林:まあ、そうなんですか。だけど、世間で「ハンサム」「セクシー」とか言われ始めたときは、お母さまも喜ばれたと思うのですが。

獅童:お袋には「顔がまずい」って言われましたね。お袋は海老蔵さんが好きで、「海老蔵さんは目が大きくていいわ。あなた、整形しなさい」って(笑)。ただ、「ピンポン」という映画でスキンヘッドになったときは、「この頭の形のよさはドーナツ枕で寝かせてた私の作品だから。感謝しなさい」と言ってましたね。

週刊朝日 2016年8月19日号より抜粋