第3次安倍再改造内閣の顔ぶれ (c)朝日新聞社
第3次安倍再改造内閣の顔ぶれ (c)朝日新聞社

 第3次安倍再改造内閣が8月3日に発足し、19人の閣僚のうち11人が交代した。官房長官や外相など骨格の主要ポストは早い段階で留任が決まり、人事は順調に進むかに思われたが、難航したのが安倍内閣の“鬼門”である農水相ポストだった。人選が二転三転したウラで何が起きていたのか。

「9月召集の臨時国会はTPP(環太平洋経済連携協定)の国会承認や農協改革がテーマになる。それで安倍さんは農水相選びを慎重に考えていた。でもね、週刊朝日が自民党の農林族幹部たちがTPP交渉の真っ最中に業界団体から現金を受け取っていたことを記事にしたでしょ。あれで農水相のなり手がいなくなっちゃったよ」

 ある政府関係者は、第3次安倍再改造内閣の農水相人事が二転三転したウラ事情を、苦笑しながらこう話した。

 記事が掲載されたのは、本誌7月8日号と同月15日号。昨年のTPP交渉に関連して、自民党の農林族議員が、国から年間50億円以上の補助金を受けている日本養鶏協会の幹部から現金を受け取っていたことを報じたものだ。

 現金を受け取ったのは、森山裕前農水相、西川公也元農水相、宮腰光寛衆院議員、江藤拓衆院議員の4人(いずれも返金したと回答)。農政に強い影響力を持つ農林族の幹部たちで、なかでも大臣未経験の宮腰氏と江藤氏は、以前から将来の農水相候補として名前が挙がっていた。

 そこに内閣改造に備えた“身体検査”でミソがついた。次の農水相には、さまざまな名前が浮かんでは消えていくことになった。

「稲田朋美氏の農水相就任もうわさされたが、政調会長時代に農政改革で党内から反発を受けていたから、安倍首相もさすがにそれは無理だと思ったのではないか」(自民党議員)

 そこで安倍首相が白羽の矢を立てたのが、地方創生相の石破茂氏だった。農水相の経験があり、安定した国会答弁にも定評がある。ところが、“ポスト安倍”を狙う石破氏は「閣内に残らずに一党員としての立場で安倍内閣を支える」と就任を拒否した。

 結局は、石破氏側近でありながら安倍首相とも近く、一緒に座禅を組んだ仲である元金融相の山本有二氏に落ち着くことになった。

 安倍首相は山本氏の起用について、

「農政改革も待ったなしだ。(中略)閣僚経験もある改革派の山本有二農水大臣にそのかじ取り役を担ってもらう」(3日の記者会見)

 と強調。だが、自民党関係者はこう話す。

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