「扱っているテーマも、実は深いものがあるんです。映画の中で描かれる天国は、ラクだけど味気なくて、地獄でもがいてるヤツらのほうが、ずっとイキイキしてる(笑)。やっぱり、人間ってのはつらい思いや苦しい思いをしてこそ、その先にある何かを得られるってことなのかな、とか。そういう“生”と“死”に関わるさまざまなことを考えさせてくれる部分もあります。もちろん、全体としてはノーテンキに笑える内容になってますけど」

 鬼の扮装とメイクがとにかく派手だが、存在そのものが大柄でゴージャスな長瀬さんでも、メイクに負けない表情をすることに、かなりのエネルギーを費やしたのだとか。

「俺が子供だったら、この鬼を見て『すごい! カッコいい!』と思うんじゃないかな。鬼とか地獄って、なんでかわかんないけど、男の子の憧れが詰まってるんです。ご多分に漏れず、俺も小さい頃、『うそをついたら地獄でえんま様に舌を抜かれるよ』って親から脅されてたのにね(苦笑)。何で地獄が魅力的かって考えると、結局、“ギリギリ”なものに、俺が引かれてるってことなのかな。ギターアンプなんかも、真空管が死ぬっていうかダメになる直前が、一番いい音が出るっていうし。ラクしようとか、安定しようとしたら、面白い表現はできない気がする。やっぱり、ロックやるなら天国より地獄でしょ(笑)」

週刊朝日 2016年7月1日号