アルドステロンには、体内にナトリウムをため込み、カリウムを過剰に排泄(はいせつ)する性質がある。血液中のナトリウムが多いと、それを薄めようとして水分が血管内に移動する。血液量が増えて血管にかかる圧力が強まり、高血圧になるわけだ。

 アルドステロンの過剰分泌は、副腎にできた腫瘍(しゅよう)や過形成(正常組織が部分的に肥大したもの)が原因で起こる。

「まず重要なのは、本態性高血圧の中に隠れている患者さんを見つけ出し、正しく診断すること。それで初めて適切な治療ができます。診断のポイントは病変が片側の副腎だけにあるのか、両側かという点です。60~70%の人は片側で、その場合は副腎を切除する手術で治せます。副腎を左右とも取ることはできないので、病変が両側にある人は、原則としてアルドステロンの作用を抑える薬でコントロールします」(西川医師)

 東北大学病院腎・高血圧・内分泌科特任教授の佐藤文俊医師は、かかりつけ医として高血圧患者の診療をしている一般内科医に、

「次の特徴がある患者さんがいたらこの病気を疑い、積極的にスクリーニング(ふるい分け)検査をしてほしい」

 と呼びかけている。

●早朝の血圧が高い人
●緊張時の血圧が平常時より30mmHg以上上昇する人
●治療抵抗性高血圧(利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を飲んでも血圧が140/90mmHg以下にならない人)
●比較的若いとき(20代、30代)から高血圧を指摘されていた人
●低カリウム血症の人、または降圧薬を飲んでいても血清カリウム値が低い(3.5~3.7mEq/L)人

 スクリーニングの方法は血液検査だ。ガイドラインでは、アルドステロン濃度(pg/ml)とレニン活性(レニンは血圧を上げる物質をつくる酵素)を測定し、「アルドステロン/レニン比」を調べることが推奨されている。その値が高いほどアルドステロンが多く、レニンが少ないことを意味する。値が200を超えていると、この病気が疑われる。

週刊朝日  2016年5月6-13日号より抜粋