さらに潜在的待機児童計約80万人(想定)を解消するために、民間認可保育所の保育士の年収(約320万円)を全産業平均(約490万円)までアップさせて増員し、園も新設。これには計約1.5兆円が必要だ。保育関連の無償化はすべてあわせると約3.6兆円で可能という計算。さらに副次的な効果もある。

「保育クーポンは認可だけでなく認可外、ベビーシッターにも使えるようにすれば、新たな幼児向けサービスや雇用を創出する可能性も出てくる」(同)

 大学卒業までのすべての教育費(公立相当分)を無償化した場合はどうか。あくまで進学率は現状のままを前提にするが、財政負担額はそれぞれ小学校が約0.7兆円、中学校約0.6兆円、高校約0.9兆円、大学約1.6兆円。

「揺りかごから墓場まで」とまではいかないが、保育から大学まで無償化すると計約7・3兆円。この期間の医療費を含めても0.5兆円増の計7.8兆円でやれる。問題は財源だが、注目すべきは相続税だ。

 日本総研の立岡健二郎研究員のレポートによると、国内で相続される資産の年間推定額は37兆~62.9兆円。この推計をもとに柴田氏は、基礎控除額(現行3千万円と相続人1人につき600万円)を配偶者1千万円、子ども1人につき100万円にまで下げて一律20%課税とすることで3.9兆~9.0兆円の財源確保が可能とみる。さらに配偶者控除などの被扶養配偶者優遇制度を年収800万円以下の世帯に限ることでも約1.1兆円を捻出できるという。

週刊朝日 2016年5月6-13日号