「児童手当と税制優遇から始まり、少子化対策には100年以上取り組んでいます。その効果が顕著に出たのは1990年代。保育サービスを充実させた直後に出生率が回復しました」(柴田氏)

 一方で、日本の子ども1人当たりの子育て支援額(対1人当たりGDP比)は今も先進国平均の約半分というのが現実だ。

「日本で少子化が始まったのは第2次世界大戦後で、歴史が浅い。さらに霞が関や政治家の『第2次ベビーブームがあったから、次もある』という想定の甘さがあった。近年の公共事業の乗数効果(政府支出が国内総生産を増やす効果)は1.1倍とされていますが、子育て支援は約2.8倍。より大きな効果が期待できます」(同)

 保育サービスの効果をみてみよう。試算では子育て支援を「保育サービス」「産休・育休手当」「児童手当」に大別し、それぞれに同じ金額を投じた場合に得られる効果を係数にした。

 それによると、例えば女性労働率を増やす効果は「産休・育休手当」が+0.64なのに対し、「保育サービス」は+1.21。産休・育休手当の倍の効果が見込めるということだ。さらに女性労働が増えれば労働生産性成長率、経済成長率も芋づる式に改善するという。もちろん子どもの貧困率の低下、出生率の改善にもつながる。

 保育サービスにはどのくらいの財政負担が必要か。34万円分(両親が非正規雇用の場合の年間保育費用に相当)の保育クーポンを、すべての子どもに配布すると想定。ここから無償化するのに必要なお金は約2.1兆円という。

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